薄毛のこと、妻はどう思ってるんだろう。長年ずっと気にしてきたわりに、それを本人に確かめたことがありませんでした。
先日、思い切って聞いてみました。いつ気づいたのか、治療をどう見ているのか、費用や薬についてはどうなのか。
返ってきた答えが、僕が想像していたものとだいぶ違いました。ひとことで言うと、温度差がすごかったんです。
妻に薄毛のことを話したとき
薄毛のことを妻に話したのは、僕からでした。向こうから聞かれたわけじゃないんです。
最初はやっぱり恥ずかしかったです。言わなくてもいいことを、わざわざ自分から言うわけなので。
でも、隠しているほうがしんどいなと思って。バレないように振る舞い続けるより、言ってしまったほうがスッキリする気がしたんです。
薬を飲んでいることも、そのときに伝えました。ここを隠してもしょうがないなと。飲み忘れないように家で管理するものなので、どのみち目に入りますし。
で、治療を始めると言ったときの反応がこれです。
「別に、好きにしたら」
以上でした(笑)。こっちはそれなりに構えて切り出したので、拍子抜けというか。責められもしないし、心配もされない。ただ通り過ぎていった感じでした。
そもそも気づいてなかったらしい
今回あらためて聞いて、いちばん驚いたのがここです。
僕の薄毛に、そもそも気づいていなかったらしいんです。
話したときの反応も「ああ、なるほど」だったと。言われて初めて、そういえばそうかもね、くらいの感覚だったみたいです。
こっちは毎朝鏡を見て、風呂上がりに排水口を見て、月に1回は自分の頭を撮って記録している。そのくらい深刻に向き合ってきたわけです。
その隣にいる人が、気づいてすらいなかった。
がっかりしたかというと、むしろ逆でした。あんなに「バレてるかも」と思っていた時期があったのに、実際は誰も見ていなかったのか、と。ちょっと肩の力が抜けた気がします。
抜け毛を見て思っていたこと
まったく何も目に入っていなかったのかというと、そうでもなくて。
床や排水口の抜け毛は見ていたそうです。そのときに思っていたのが、これでした。
「多いな、ウィッグできるな」
深刻さがゼロ(笑)。心配の方向ではなく、素材としての量に感心していたという。
もうひとつ理由があったみたいです。妻の中学時代の友達に、髪が抜ける子がいたらしくて。その子と比べたら僕のはそうでもない、という感覚だったと。
比較の対象が、僕の想定とぜんぜん違ったんです。僕は同世代の男性と自分を比べて落ち込んでいたのに、向こうの物差しは別のところにあった。
気を遣って黙っていたわけでもないそうです。言わずに飲み込んだことも、言えばよかったと思っていることも、特にないと言われました。
「気にしてるわりに髪染めてるよね」
今回いちばん刺さったのが、この一言です。
「気にしてるわりに髪染めてるし、よくわからん」
僕からすると、逆なんです。気にしてるから染めてる。
白髪が増えてくると、それだけで老けて見える。薄毛と白髪が同時に来ると、実際の年齢より上に見られる気がして、それが嫌で美容室でカラーをしています(白髪と薄毛が両方きた話に書きました)。パーマも同じで、何もしなくてもそれなりに見える状態にしておきたいからかけている。
僕の中では、全部つながってるんです。薄毛を気にしてるからこそ、染めるし、パーマもかける。
でも、外から見たらそうは映らないらしい。「気にしてる人が、髪をいじって遊んでる」という、矛盾した絵に見えていたわけです。
言われてみれば、この理屈を一度も説明したことがなかったなと。伝わっていないのも当然でした。
黙って対策していると、対策そのものが誤解される。これは僕にとって発見でした。
薬にも費用にも興味がない
費用のことも聞いてみました。長年払い続けているので、そこは何か思っているだろうと。
「自分のお金ではないから別に」
薬についても聞きました。こっちは種類を変えたり足したりしてきたので、不安に思われていないかが気になっていたんです。
「わからないから何もない」
続けていること自体にも、特に何も思っていないそうです。やめろとも、続けろとも思っていない。
同じ感じだったのが、禁煙とダイエットでした。
どちらも、やめたあと・痩せたあとに事後報告しています。そのときの反応は「ふーん」。そのあとに「やめて、痩せてよかったね」とは言われました。
タバコをやめたのは髪のためで、僕の中ではかなり大きな決断だったんです(禁煙と抜け毛の記録)。それでも「ふーん」から始まる(笑)。
よかったね、とは言ってくれる。ただ、そこに感情の起伏はない。関心のある領域ではないんだな、というのがよくわかりました。
「治療は勧めない」と言われた
いちばん聞いてみたかったのが、ここです。
もし夫が薄毛を気にしていたら、どうしてほしいか。治療を勧めるか、勧めないか。
答えは「勧めない」でした。
理由が意外で。髪がなくなるのが嫌だから勧める、でもなければ、その逆でもない。単に関心がないから勧めない、ということらしいんです。
「薄毛でも気にしていない」というのは本当なのかも聞きました。気を遣ってそう言ってるんじゃないか、と疑っていたので。
「自分の気持ちだし、気にしてない」
見た目の印象についても聞いてみました。返ってきたのは「キープできてるからいいんじゃない」でした。褒められたわけでも、けなされたわけでもない。現状維持の確認、という感じの返事です。
同じ立場の人に何か言うとしたら、と聞いてみたら、これも「特にない」でした。
聞いてみてわかったこと
聞く前は、もっと違う答えを想像していました。
気を遣って黙っていてくれたとか、本当は気にしてるけど言えなかったとか。そういう物語があるんじゃないかと思っていたんです。
なかったです(笑)。
妻は、反対もしないし、否定もしない。応援もしない。ただ関心がない。それだけでした。
聞いてよかったかというと、よかったです。ずっと想像していた「どう思われてるか」が、想像でしかなかったとわかったので。
家族に話すかどうかで迷っている人もいると思うので、僕の場合の感覚を並べておきます。人によって家の事情は違うので、あくまで僕はこうだった、という話です。
| 場面 | 僕の感覚 |
|---|---|
| 薬を飲み始める・飲んでいる | 話しておくほうがいいと思う。体調に変化が出たときに説明がつく |
| 費用が家計から出ている | 話しておくほうがいいと思う。あとから説明するより先に言うほうがラク |
| 隠していること自体がしんどい | 話しておくほうがいいと思う。僕はここでした。言ったらスッキリしました |
| まだ何も始めていない | 急がなくていいと思う。自分の中で決まってからでも遅くない |
| 相手の反応を期待している | 急がなくていいと思う。期待した反応は返ってこないかもしれない |
| 言うと決心が鈍りそう | 急がなくていい。決めてから報告でも十分。僕の禁煙は事後報告でした |
ひとつだけ、はっきりわかったことがあります。家族は、背中を押してくれない。
押してくれないというより、押す理由がないんです。関心のないことについて、人は意見を持たない。
冷たいわけじゃないと思っています。反対もされないし、否定もされない。好きにしたら、と言われるだけ。それはそれで、ありがたい距離感なのかもしれません。
だから、動くなら自分で決めて、自分で始めるしかない。
僕もそうでした。自分で調べて、自分で病院に行って、自分で始めた。誰かに勧められて動いたわけじゃないんです。
それでいいんだと思っています。自分の頭のことなので。

