僕、大人になってから写真が苦手になりました。
正確に言うと、写真そのものより、写真に写った自分の頭を見るのがこわかった。
中でもダメだったのが、職場の集合写真と、免許の証明写真。この2つは、薄毛を気にしはじめてからの僕にとって二大鬼門でした。
今日は、そのしょうもない、でもわりと切実だった話をします。同じ人、きっといるはずなので。
集合写真で、後ろに逃げるようになった
若い頃は、写真なんて何も考えずに撮っていました。どこに立とうが気にしなかった。
それが変わったのは、抜け毛が気になりはじめてから。社会人になって、しばらく経った頃です。
職場の集合写真とか、部署の飲み会での記念撮影とか。ああいう場面で、僕は無意識に後ろへ逃げるようになりました。
なるべく後ろの列に行って、前の人の頭にちょっと隠れる位置を狙う。
後ろの列って、たいてい一段高いところに立つじゃないですか。ひな壇みたいに。そうすると、カメラが自分の頭を上から捉えることになる。頭頂部が、モロに写る。
だから僕は、後ろの中でも、前の人の後頭部が自分の生え際あたりに重なる位置を、地味に計算して立っていました。
いい大人が、集合写真ひとつでそこまで頭を使ってた(笑)
「上から」の角度が、とにかく天敵だった
薄毛を気にしている人間にとって、一番こわい角度が「上から」です。
正面はまだいい。ごまかしがきく。でも、上から見下ろされると頭頂部が全部見えてしまう。自分では見えない部分が、写真だと他人の視点で残る。
飲み会で、誰かがスマホを高く構えたとき。階段や段差で写真を撮るとき。ふとした瞬間に「あ、今の角度やばい」とセンサーが働く。もう条件反射でした。
自分の頭のてっぺんって、鏡でもなかなか見えないじゃないですか。だから写真で不意に見せられると、「え、こんなことになってるの」とショックが大きい。あの不意打ちが、本当に苦手でした。
撮ったあと、写真が回ってくるのもまたこわい。みんなが「いい感じに撮れたね」とか言っている横で、僕はまず自分の頭だけを確認している。そこしか見ていません。
実は「カメラのせい」がけっこうあるらしい
これ、当時知りたかった話です。
調べたら、写真で頭皮が透けて見えるのは、照明や角度が原因であることも多いそうです。
照明やフラッシュが強いと、光が髪の奥まで届いて頭皮が透けて見える。蛍光灯の下や、強い日差しの下では特に透けやすい、と。
そして、スマホの広角レンズ、フラッシュ、真上からの角度。この3つは、誰でも頭頂部を薄く写すそうです(頭頂部と生え際を比べた記録)。
えー、そうだったの!
つまり、あの「思ったより薄く写ってる」ショックの何割かは、実際より悪く写っていただけかもしれない、ということで。
あの頃、写真を見るたびに絶望していた自分に教えてあげたかったです。全部が本当の姿じゃなかったんだよ、と。
本当に確認したいなら、条件を揃える
とはいえ、全部カメラのせいにするのも違います。
ちゃんと確認したいときの条件も書かれていました。フラッシュはオフ、自然光の下、髪は完全に乾いた状態。この条件で撮り直してみる。
濡れた髪は1本ずつが束になって隙間ができるので、乾いているときより透けて見えるそうです。風呂上がりの写真は、そりゃ悲惨に写るわけだと納得しました。
そのうえで、条件を揃えても透ける、過去の写真と明らかに差がある、細く短い毛が増えた。このうち2つ以上当てはまるなら、本当の変化の可能性がある、と。
なるほど、判断基準としてわかりやすいですね。
僕が月1で頭を撮るときも、なるべく同じ場所・同じ明るさ・同じ角度で撮るようにしています(同じ条件で撮った頭部記録)。条件が揃っていないと、比べる意味がなくなるので。
免許の証明写真は、逃げ場がなかった
集合写真はまだ、立ち位置で抵抗できます。でも証明写真は逃げ場がない。
真正面から、明るい照明で、きっちり撮られる。しかも免許更新の写真は、椅子と機械の都合でちょっと上から撮られることも多い。更新のたびに、地味に憂うつでした。
撮ったあと、下から写真が出てくるじゃないですか。あれを見る瞬間が、毎回こわい。「うわ、こんなに写るのか」って。
しかも免許証の写真は、次の更新までずっとその1枚。何年も使われる。逃げられないんです。
だから撮る前に前髪を整えたり、あごの角度を工夫したり、無駄なあがきをしていました。
身分証を出すたびに、ちょっとだけ気が重い。あの感じ、経験がある人はわかると思います。
証明写真機が最悪だった理由を、あとで知った
そして、これを調べていて膝を打ちました。
駅前などにあるスピード写真機。あれ、狭いボックスの天井付近から強い光が当たる構造になっているそうです。
つまり「上からの強いダウンライト」。頭頂部や生え際の薄毛を、最も残酷に強調するライティングだ、と書かれていました。
最悪じゃないか。
薄毛を気にする人間が、いちばん避けたい角度と光を、あの箱は完璧に再現していたわけです。どうりで毎回ひどい仕上がりになるわけだと。
一方、写真館で撮ってもらうと、正面や斜め下から柔らかい光を当ててくれる。頭頂部の不自然なテカリを防げるそうです。
履歴書の写真なんかは、数千円かけてでも写真館で撮ったほうがいい、という話でした。これ、就活や転職をする人には本当に役立つ情報だと思います。
僕も当時これを知っていたら、免許以外の証明写真はぜんぶ写真館にしていたはずです。
今は、そこまで気にしなくなった
さんざん逃げ回っていた僕ですけど、今はけっこう平気です。
理由はシンプルで、治療を続けて自分の頭にある程度納得できるようになったから。あと、パーマをかけて「上から見てもそれなりに見える」状態を作れたのも大きい。
隠すことに必死だった頃は、写真の角度に一喜一憂していました。でも、向き合う方向に切り替えてからは「まあ、写ってもいいか」くらいに思えるようになった。
不思議なもので、頭が変わったというより、気持ちが変わったんだな〜と。「見られたら困る」が減ると、写真もそんなにこわくなくなる。
今でも集合写真で後ろに行く癖は、ちょっと残ってますけど(笑)。でも、前ほど深刻じゃない。撮られても、自分の頭だけを探すことはなくなりました。
これは自分でも意外だった変化です。
子どもの行事なんかで、自分が撮る側に回ることが増えました。そうすると、写真に対する感覚がちょっと変わって。
撮っているとき、僕は他人の頭頂部なんて一切見ていません。ピントと表情と、変な顔になっていないか。それくらいしか気にしていない。
あとで写真を見返すときも同じです。誰がどんな髪の量だったかなんて、まったく記憶に残らない。
それに気づいたとき、「あ、みんなもそうなんだ」と腑に落ちました。
僕が自分の頭だけを見ていたように、他の人は自分の顔だけを見ている。誰も他人の頭頂部を採点していない。
当たり前のことなんですけど、撮る側に回るまで実感できませんでした。頭ではわかっていても、体感するのは別なんですね。
写真から逃げてる人へ
もし今、集合写真で後ろに逃げたり、証明写真に絶望したりしている人がいたら。
その気持ち、めちゃくちゃわかります。僕も長いこと、そっち側にいたので。
まず知ってほしいのは、写真は実際より悪く写ることがあるということ。上からの角度、強い照明、フラッシュ。この3つがそろうと、誰でも薄く見えます。
だから、あの1枚だけを見て絶望しなくていい。本当のところが知りたいなら、自然光で、乾いた状態で、同じ条件で撮り比べる。
そのうえで「やっぱり変わってきてるな」と思ったときの僕は、写真のせいにするのをやめて、素直に自分の状態と向き合うようにしています。
写真の角度を一生気にし続けるのって、地味にしんどいんです。撮られるたびに身構えて、写るたびに落ち込んで。あの消耗、思い返すともったいなかったなと。
角度を工夫するより、頭そのものに向き合うほうが、結果的にラクでした。これは僕の実感です。
集合写真、もう後ろに逃げなくて大丈夫。そう思える日が、ちゃんと来ます。僕がそうだったので。
最後にひとつ。
あの頃の写真、今は見返せるようになりました。当時は直視できなかったのに。
見返してみると、思っていたほどひどくないんです。あんなに絶望していたのに、実際は「まあ、普通だな」くらいで。
そのときの自分の目には、実物より何倍も悪く映っていたんだと思います。不安って、そういうふうに視界を歪ませるので。
だから、今まさに写真を見て落ち込んでいる人がいたら。数年後の自分は、たぶんその写真を見て「思ったほどじゃないな」と言います。
そのときのために、逃げずに1枚だけでも残しておくのも、悪くないかもしれません。

