朝、髪を乾かしていて思うことがあります。
「これ、昔はもっと立ち上がったよな」
ペタッとしている。ハリとかコシとか、そういう言い方をされるやつが、昔より減っている感じがする。生え際も、昔とは違う。
で、ここで止まるんです。これは年齢のせいなのか、それともAGAのほうなのか。
ペタッとしてきた。これは年齢なのか
40代です。40代なので、髪が昔と同じわけがない。それは頭ではわかっています。
肌だって変わるし、体力も落ちる。髪だけ20代のままということはない。
でも、僕はAGAの治療を長年続けている側の人間です。だから「年齢のせいだよね」で流していいのか、判断がつかない。
もし進行しているなら、それは知っておきたい。逆に、ただの加齢なら、気に病んでもしょうがない。
このどっちなのかが、自分ではわからないんです。
鏡を見てもわからない。乾かしていて手ざわりが違うと思っても、それが何を意味するのかはわからない。
「なんとなく変わった」の先に進めない。ずっとそこで止まっています。
厄介なのは、どっちだったとしても見た目は同じだということです。細くなってペタッとしている、という結果だけが目の前にある。
原因が違えば意味が違うのに、出てくる形が同じなんです。
しかも、どっちも「ゆっくり進む」という点まで同じで。急に来てくれたら、まだ気づきようがあるのに。
長年見てきたのに、今の変化はよくわからない
これ、自分でもちょっと意外でした。
長年やっているので、AGAの変化は見てきたつもりだったんです。抜けるとどうなるか、細くなるとどう見えるか。自分の頭で何度も見てきた。
だから今回も、見ればわかるだろうと思っていました。
わからなかった。
というのも、昔の変化はもっとはっきりしていたからです。生え際が後退する、頭頂部が透ける。場所も方向もわかりやすかった。
今起きているのは、そういう変化じゃない。全体的に、なんとなく元気がない。線が細くなったような、ボリュームが減ったような。
場所が特定できないんです。「ここが薄くなった」と言えない。
そして、同世代を見ても同じような変化があります(同世代と久々に会ったときの記録)。みんな似たような感じになっている。
そうなると、余計に分けられない。自分だけに起きているなら治療の話かもしれないけど、周りも同じなら年齢の話かもしれない。
長くやってきたぶん、目は肥えているはずなんです。でも、その目が今回は役に立たなかった。
経験があると、かえって「わかるはずだ」と思い込むぶん、わからないと認めるまでに時間がかかる。今回はそれでした。
調べてみた:加齢で髪に起きること
わからないので、調べました。まず加齢のほうから。
海外の医学誌に載っていた総説を読んだんですけど、加齢で髪に起きることが並んでいました。
ひとつめは、髪が細くなること。毛髪の直径が最大になる年齢があって、そこを過ぎると減っていくそうです。
驚いたのが、その時期でした。男性は10代後半あたりがピークだと書かれていて。研究によって15歳、18歳と幅はあるんですけど、どれも「思ったよりずっと早い」という点では共通していました。
つまり、40代で細くなっているのは、加齢としてはむしろ当たり前ということになります。
ふたつめは、うねりが出ること。日本人女性を対象にした研究では、年齢とともに毛髪のうねりが増えるという報告がありました。まっすぐだった髪が、少しずつ曲がってくる。
うねりが増えると、光の反射がバラバラになってツヤが落ちる。ボリュームの見え方も変わる。
みっつめは、成長期が短くなること。髪には生えて伸びて抜けるサイクルがあるんですけど、加齢でその「伸びる期間」が短くなり、休んでいる期間が長くなる、と。
そうすると、髪は短く細くなっていく。白髪が増えるのも、この時期に重なります(白髪が増えてきたときの記録)。
調べてみた:AGAで髪に起きること
次に、AGAのほうを調べました。
こっちは一次資料に当たれました。日本皮膚科学会が出している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」の2017年版です。学会のサイトでPDFが公開されていて、そのまま読めます。
そこに、こう書かれていました。
毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなる。臨床的には前頭部や頭頂部の頭髪が、軟毛化して細く短くなり、最終的には頭髪が皮表に現れなくなる。
読んでいて、あれ、と思いました。
「成長期が短くなる」。さっき加齢のほうで読んだのと、同じことが書いてある。
もうひとつ、目に留まった記述があります。「休止期脱毛と異なり、パターン化した脱毛が特徴である」。
パターン化。つまり、AGAは決まった場所に出る。前のほうと頭頂部です。全体が均一に薄くなるのではなく、場所が偏る。
それと、日本人男性の場合は20歳代後半から30歳代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳代以後に完成される、とも書かれていました。
40代以後に完成、というのは、なかなか重い言い方だなと。
調べた範囲での違い、表にしてみた
読んだ内容を並べてみます。
ここで先に書いておきますけど、これは診断ではありません。自分がどっちかを判定するための表でもない。調べた範囲で「こう違うらしい」と書かれていたことを、並べただけのものです。
| 見るところ | 加齢による変化 | AGAによる変化 |
|---|---|---|
| 出る場所 | 頭全体。場所が偏らない | 前のほうと頭頂部。場所が決まっている |
| 進み方 | ゆっくり、全体的に | 決まった形に沿って進む |
| 毛の状態 | 細くなる。うねりが出る | 細く短くなり、やがて表に出なくなる |
| 左右差 | 出にくい | 生え際の形に左右差が出ることがある |
| 白髪 | 一緒に増えることが多い | 直接は関係しない |


こうして並べると、いちばんの違いは「場所」でした。
全体か、決まった場所か。ここが分かれ目だと書かれていることが多かったです。
ただ、表を作りながら気づいたことがあって。「細くなる」の行は、どっちにも書いてあるんです。成長期が短くなるのも、両方に書いてある。
それでも、混ざっているものは分けられない
表はできました。でも、自分に当てはめてみたら、答えは出ませんでした。
理由ははっきりしています。両方が当てはまるからです。
僕の場合、生え際は昔と違います。これはAGAの特徴と重なる。でも全体的にペタッとしているのは、加齢の特徴とも重なる。どっちかを消せない。
しかも、調べていて決定的な記述を見つけました。
高齢者の脱毛について書かれた総説に、加齢による脱毛とAGAは遺伝子の働き方が違っていて、別々のものかもしれない、という研究が紹介されていたんです。
そして、その2つはしばしば同時に存在する、と。
同時に存在する。つまり、どちらか片方ではなく、両方が起きている可能性がある。
そう書いてあるものを、素人が鏡の前で切り分けられるわけがないなと思いました。
学会のガイドラインにも、除外すべき病気はいくつも挙がっているんですけど、そこに「加齢」は入っていません。加齢とどう見分けるか、という項目がそもそもないんです。
専門家向けの文書に書かれていないことを、僕が判定できるはずがない。そこは、あきらめました。
決めつける前に、やらないほうがいいこと
分けられないとわかったうえで、じゃあ何をしないでおくか。僕が気をつけていることを書いておきます。
ネットの写真と見比べて結論を出さない。これがいちばんやりがちです。似た写真を探して「自分もこれだ」と思うんですけど、写真の角度も光も違うので、比べたことになっていません。
自己判断で薬を増やしたり減らしたりしない。処方されているものは、決められたとおりに飲む。「効いてない気がするから」で自分でいじるのは、いちばんやってはいけないところだと思っています。
市販のものを何種類も重ねない。あれこれ足すと、何が効いて何が効いていないのかが、あとから絶対にわからなくなります。原因を探しているときに、変数を増やすのは逆方向です。
その日の抜け毛の量だけで判断しない。抜け毛は日によって波があるので、単発で見ても何もわかりません。
あと、これは自分に言い聞かせていることなんですけど。答えが出ないことに、時間をかけすぎない。
考えてもわからないことを、鏡の前で何十分も考える。あれをやっていた時期があります。何も進まないうえに、気分だけ悪くなる。
どれも、僕が過去にやって遠回りしたことばかりです。
結局、見てもらうのが早い
長々と調べたあとに書くことでもないんですけど。
自分で答えを出す方法は、たぶんないです。
ガイドラインの診断のところには、問診で家族歴や経過を聞いて、視診で生え際や毛の状態を確認する、と書かれていました。拡大鏡を使うこともある、とも。
問診と視診。つまり、話を聞いて、見る。それが基本ということです。
自分でできるのは、このうち「見る」の一部だけです。しかも自分の頭は、いちばん見えない場所にある。
僕は皮膚科で診てもらっています。長く同じところに通っているので、経過も含めて見てもらえる。それが、いまのところ自分にできる唯一の方法かなと思っています。
答えが出なかった、という結論で終わるのは、記事としてどうなんだという気もするんですけど。
でも、わからないものを、わかったふうに書くほうが良くないので。分けられなかった、というのが今回の記録です。
髪質の変化そのものについては、別に書いたことがあります(量より髪質を見るようになった記録)。数えるのをやめて、手ざわりのほうを見るようになった、という話です。
分けられなくても、見続けることはできる。いまはそれくらいの距離感でいます。

