昔、ドラッグストアの育毛剤コーナーで、よく立ち止まってました。
棚にずらっと並んでるやつです。1本3,000円とか5,000円とか。値段もバラバラで、書いてあることも似てるようで違う。
「どれが効くんだ、これ……」
成分表とキャッチコピーを見比べながら、20分くらい悩んでたこともあります。で、結局よくわからないまま、なんとなく高いやつを買う。
調べたら、棚の見方がだいぶ変わりました。
昔の僕、完全に迷子だった
当時の僕、育毛剤に夢を見てました。
これを使えば、少しは生えるかもしれない。そう思って、いろんな商品を試しては、変化がわからなくて、また別のを買う。
選び方の基準も、あってないようなものでした。値段が高いほど効きそう。パッケージが本格的なやつがよさそう。口コミの評価が高いから、たぶん良いはず。
今思えば、全部あてになりません。でも当時は、それしか判断材料がなかった。
そもそも、何を見れば効くかどうかがわかるのか。それを知らなかった。
しかも、レジに持っていくときがまた恥ずかしくて。育毛剤を裏返して、パッケージが見えないように持つ(笑)
今考えると、店員さんは何とも思ってないはずです。毎日いろんな人が買っていくものなので。こっちが勝手に気にしてただけでした。
まず、法律上の分類が3つあった
今回調べて、いちばんスッキリしたのがここ。
薄毛関係の商品って、薬機法上、3つに分かれてるらしくて。
医薬品、医薬部外品、化粧品。
医薬品は、病気の治療や予防を目的とするもの。厚生労働省の認定を受けたものだけがこう名乗れる。医師が処方する医療用医薬品と、薬局で買える一般用医薬品があって、後者は第1類から第3類まで分かれてる。
医薬部外品は、厚労省が許可した成分が入ってるけど、医薬品ほど強くはないもの。予防や衛生が目的、という位置づけ。
化粧品は、髪や頭皮を清潔に保ったり、見た目を整えたりするもの。
3つを並べてみると、こんな感じです。
| 分類 | 代表的な商品 | 目的 | 購入のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 医薬品(第1類) | 発毛剤 | 治療・予防(新しく生やす) | 薬剤師の説明が必要 |
| 医薬部外品 | 育毛剤・養毛剤 | 予防・衛生(今の髪を守る) | 誰でも買える |
| 化粧品 | シャンプーなど | 清潔・見た目を整える | 誰でも買える |
えっ、そもそも土俵が違ったの?!
これを知らずに横並びで比べてたので、そりゃ迷うわけだと。
で、実用的な話。見分け方は、けっこう単純でした。パッケージの表示を見ればいいだけ。
「第1類医薬品」と書いてあれば発毛剤。「医薬部外品」と書いてあれば育毛剤。
これだけ。
あの棚で20分悩んでた僕、そこ見てませんでした。成分表の細かい字を追いかけて、肝心の分類を見落としてました。
たぶん、字が大きくて目立つところは広告文だと思って、無意識に読み飛ばしてたんだと思います。実際は、そこに一番大事な情報が書いてあった。
ちなみに第1類医薬品は、薬剤師からの説明を受けないと買えません。店頭でもネット通販でも、薬剤師のチェックが入るので、レジの奥から出てくるタイプのやつですね。
「育毛」と「発毛」は目的が違う
分類がわかると、次は言葉の意味。
育毛と発毛、似てますけど、目的が違うらしいです。
育毛は、今ある髪を守ること。頭皮環境を整えて、抜け毛を防いで、今生えてる髪のコシやハリを保つ。
発毛は、新しく毛を生やすこと。弱った毛包に働きかけて、生えてくるほうを狙う。
「育毛=髪を守る」「発毛=髪を生やす」。この整理が、いちばんわかりやすかったです。
だから、目的が違えば選ぶものも変わる。今ある髪を守りたいのか、生やしたいのか。そこを決めないと、そもそも選べない。
当時の僕は、両方いっぺんに欲しかったので、余計に迷ってたんだろうなと。
市販で発毛が認められてる成分は、ひとつだけ
これ、知っておくと棚での迷いが激減します。
市販薬の中で、発毛効果が認められてる有効成分はミノキシジルだけ。日本国内では、これ1つだけらしいです。
市販の発毛剤は、ミノキシジル配合の第1類医薬品。男性用は5%、女性用は1%という違いがあるらしいです。そして育毛剤は医薬部外品で、ミノキシジルは入ってない。
えー、そんなにシンプルだったのか!
「新しく生やす」を狙うなら、選択肢はミノキシジル配合の発毛剤しかない。それ以外は、目的が別ということになる。
あの棚で悩んでた時間、この一行を知ってれば5秒で済んでたわけです。
逆に言うと、市販の育毛剤にミノキシジルを期待しても入ってません。そこは最初から別の商品だった。
ずっと「どの育毛剤が一番生えるか」で悩んでたんですけど、質問自体がズレてました。
ただ、調べてて「うわ、これは引っかかる」と思った話があって。
医薬部外品の育毛剤でも、パッケージに「発毛促進」と書けるんです。
厚労省の通達で、育毛剤・養毛剤が表示できる効能効果の範囲が決まってて。そこに「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」と並んでる。
「発毛促進」、入ってるじゃないですか。
だから、医薬部外品でも「発毛促進」と書ける。ただし「発毛剤」とは名乗れない。正しくは「発毛促進剤」になる、と。
発毛剤と発毛促進剤。一文字違うだけで、法律上の立ち位置がまったく違う。
いや、わかりにくいでしょこれ(汗)。僕、完全に勘違いしてました。「発毛って書いてあるから医薬品なんだろう」と思ってたので。
言葉のニュアンスじゃなくて、分類の表示を見る。今回いちばんの収穫は、たぶんここです。
じゃあ育毛剤は意味がないのか
ここまで書くと「育毛剤って無駄なのか」と思うかもしれません。
でも、そうでもないみたいで。
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」に、外用の成分がいくつか載ってます。推奨度を表にしてみました。
| 成分 | 使い方 | 推奨度 |
|---|---|---|
| ミノキシジル | 外用 | A(行うよう強く勧める) |
| ミノキシジル | 内服(飲み薬) | D(行うべきではない) |
| アデノシン | 外用 | B(行うよう勧める) |
| カルプロニウム塩化物・t-フラバノンなど | 外用 | C1(行ってもよい) |
ここ、混同しやすいので書いておきます。ミノキシジルは、外用(塗るタイプ)と内服(飲むタイプ)で評価がまったく違います。外用はAで最高ランクですけど、内服はD。国内では承認されてない飲み方なので、そこは別物として扱ってます。
C1あたりが、いわゆる育毛剤に使われてる成分らしいです。
臨床データはあるけど、サンプル数が少なかったり、効果の規模がA・Bと比べて小さかったりする。だから「基本の治療+補助」という位置づけになる、と。
まったく無意味ではない。ただ、主役でもない。
補助として使うなら意味があるけど、これ1本で薄毛をどうにかしようとすると、たぶん期待外れになる。そういうことですね。
で、ここが面白かったんですけど。
さっき出てきたアデノシン。推奨度Bで、ミノキシジルの次に評価が高い成分です。
これ、医薬品じゃなくて医薬部外品なんだそうで。薬用化粧品の扱いで、ドラッグストアで買えるシャンプーや育毛剤に入ってる。
毛乳頭に働きかけて、発毛促進因子の産生を高める。2004年に厚労省から育毛料として医薬部外品の承認を受けてる、と。
へ〜、そういうのもあるのか〜。
「医薬部外品=効果が弱い」と単純に決めつけるのも、正確じゃない。分類と推奨度は、必ずしも一致しない。
分類で見ると医薬部外品。ガイドラインで見ると推奨度B。どっちを基準にするかで、評価が変わっちゃう。
こういうところが、市販品選びの難しさだなと。棚の前で20分悩んでも答えが出なかったのは、当然といえば当然でした。
副作用も、分類なりに違う
これも押さえておきたいところ。
発毛剤の副作用について調べたら、大正製薬が自社製品「リアップ」(ミノキシジル5%)について実施した市販後調査(518施設・3,072例が対象)で、使用者の8.82%に何らかの副作用が出た、というメーカー自身の調査データがありました。頭皮のかゆみ、かぶれ、赤みが多いみたいですけど、これは皮膚症状に限らず全身の症状も含めた数字だそうです。あくまで一製品の調査データなので、他の発毛剤すべてに同じ数字が当てはまるわけではないと思います。
それと、ミノキシジルはもともと降圧薬として開発された経緯があるので、高血圧がある人は注意が必要、と。
一方、育毛剤は医薬部外品なので、副作用のリスクは相対的に低い。ただゼロではなくて、アルコール濃度の高いものは、敏感肌や乾燥肌の人だと頭皮の乾燥を招く可能性がある、と。
効果が強いものほど、副作用のリスクも上がる。これ、飲み薬のときと同じ構図です。
デュタステリドのときも同じでした。フィナステリドより強く効くぶん、副作用の頻度もやや高い。
強さと安全性は、たいてい交換条件になってる。だから「一番強いやつをください」が正解とは限らない。
自分の状態に合ったものを選ぶ。そのために、プロがいるんだなと感じてます。
僕が遠回りして学んだこと
振り返ると、あの育毛剤を買い漁ってた時期は、完全な遠回りでした。
理由は2つあって。
ひとつは、分類を見てなかったこと。医薬部外品を買って「発毛」を期待してたので、そもそも目的と道具が合ってなかった。
もうひとつは、順番を間違えてたこと。
AGAの原因は男性ホルモンと遺伝です。そこに手を打たずに、外側から塗るものだけでどうにかしようとしてた。土台のケアだけで、原因を放置してた。
今なら、こう考えます。まず原因に手を打つ。そのうえで、必要なら補助を足す。
逆の順番でやってたから、いくら使っても手応えがなかった。当たり前の話でした。
あの頃、育毛剤に使ったお金を全部足したら、けっこうな額になるはずです。考えたくないので計算してませんけど(笑)
育毛剤コーナーで迷ってる人へ
もし今、あの棚の前で立ち止まってる人がいたら。
まず、パッケージの分類表示を見てください。「第1類医薬品」なら発毛剤、「医薬部外品」なら育毛剤。ここで、目的がまったく違います。
そして、自分がどっちを求めてるかを決める。今ある髪を守りたいのか、新しく生やしたいのか。
生やすほうを狙うなら、市販ではミノキシジル一択。それ以外の商品にそれを期待しても、たぶん噛み合いません。
「発毛促進」と書いてあっても医薬部外品のことがあるので、言葉じゃなく分類を見る。ここ、大事なところです。
そのうえで、これも書いておきます。
市販品でできることには、限界があります。AGAが原因なら、外から塗るだけでは原因そのものは止まらないので。
僕は何年も棚の前で悩んでから、やっと病院に行きました。あの時間が全部ムダだったとは言いませんけど、順番は逆だったなと感じてます。
先に自分の状態を確認して、それから何が必要かを決める。そのほうが、確実に早い。棚の前で20分悩むより、そっちのほうが有意義かもしれません。
今の僕は、育毛剤コーナーの前で立ち止まらなくなりました。
見なくてよくなったから。自分に必要なものが、もうわかってるので。
あの迷いから抜けるのに、ずいぶん時間がかかりました。同じところで足踏みしてる人が、少しでも早く抜けられたらなと思ってます。
最後にひとつ。
今回調べてて思ったのは、あの棚は「わかりにくいようにできてる」わけじゃないんだなということ。
分類も、効能効果の範囲も、全部ルールとして決まってる。書いてあることは、ちゃんと法律に沿ってる。
ただ、その前提を知らないと読み解けない。それだけの話でした。
第1類医薬品か、医薬部外品か。育毛か、発毛か。この2つを知ってるだけで、棚の風景がまったく違って見えます。
知識って、こういうときに効くんだなと。20分の迷いが、5秒で終わるようになるので。

